• 益田川ダムの設計と施工

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    • Abstract: 191122_. 益田川ダムの設計と施工. 図- 1 ダム位置図. 益田川ダムに排砂ゲートを設置する計画 【益田川ダム】 貯砂ダム. H ... 本ダムに排砂門の設置. 洪水の減水期に排砂門より排砂. 排砂ゲート. 洪水終了後、ゲートを閉め貯留. 排砂量の軽減のため朝倉地区に貯砂ダムを設置. 貯水池内に不特定補給ダムを設置する計画 【益田川ダム】 不特定容量. H ...

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191122_益田川ダムの設計と施工
益田川ダムの設計と施工
Design and Construction of Masudagawa Dam
中村 壽浩*
1.はじめに 益田川ダムは、昭和 47 年災害を契機に事業
益田川治水ダム建設事業は、洪水調節を目的 を進めていたが、過去最大の「昭和 58 年 7 月
とした益田川ダムの建設と、既得取水の安定確 豪雨災害」により計画を見直したところ、洪水
保や河川環境の保全等を目的とした既設笹倉ダ 調節容量の増加が必要となった。
ムの再開発からなる。 しかし、ダム上流に位置する集落の水没回避
このうち、治水専用ダムとして平成17年度 等の理由からダム高に制約を受け、貯水容量の
に完成、供用を開始した益田川ダムは、ゲート 全量確保が困難な状況となったため、不特定容
レスの常用洪水吐きを河床に設置した全国的に 量をダム上流の支川波田川にある笹倉ダムの再
も珍しい構造である。 開発で確保し、益田川ダムを治水専用ダムとし
今回、益田川ダムの最大の特徴である、治水 て計画を見直した。計画の変遷を図-2 に示す。
専用ダム化(貯水池容量の再配分)に至った経 益田川治水ダム建設事業・全体計画の推移
貯 水 池 容 量 配 分 図
緯と、河床への常用洪水吐きの設置に関する設 ①
 益田川ダムに排砂ゲートを設置する計画
排 【益田川ダム】

計施工の概要等について報告する。 ゲ



洪水調節容量
2.計画の経緯 貯砂ダム
H=48.0m
益田川ダムは、島根県西部の二級河川益田川 堆砂量
   (本ダム+貯砂ダム)
不特定容量 ①本ダムに排砂門の設置
中流の益田市久々茂町地先に建設する治水専用 排砂ゲート
②洪水の減水期に排砂門より排砂
③洪水終了後、ゲートを閉め貯留
④排砂量の軽減のため朝倉地区に貯砂ダムを設置
ダムで、堤高 48.0m、堤頂長 169.0m、総貯水 ②
 貯水池内に不特定補給ダムを設置する計画
治 【益田川ダム】

容量 6,750,000m3 、有効貯水量 6,500,000m3 専




の重力式コンクリートダムである。 不水
貯 洪水調節容量 不特定容量
特地 H=48.0m
排砂ゲート
定内    (本ダム+不特定補給ダム(貯水池内))
補 ①本ダムに洪水調節、排砂機能
給 ②貯水池内の朝倉地区に不特定補給ダムを築造し
ダ 堆砂量  容量確保
ム ③本ダムのは排砂は常用洪水吐より自然排砂
案 ④洪水の初期に不特定補給ダムの排砂門より排砂
⑤洪水終了後、ゲートを閉め貯留
 不特定容量を上流農地防災ダム(笹倉ダム)で確保する計画

治 【益田川ダム】 【農地防災ダム(笹倉ダム)】




ム    H=36.2m  不特定容量

貯   堆砂量 
不水
特地
定外



ム 洪水調節容量

H=48.0m
   (本ダム+農地防災ダム(笹倉ダム))
①本ダムに洪水調節、排砂機能
堆砂量 ②波田川の農地防災ダムの再開発を行い不特定容
 量を確保
③本ダムの排砂は、常用洪水吐より自然排砂
図-1 ダム位置図 図-2 ダム計画の変遷
* 島根県土木部河川課 河川開発室 企画員
191122_益田川ダムの設計と施工
これにより益田川ダムは、排砂門(自然排 通常の 100 年堆砂を前提としたダムのように
砂)を兼用した常用洪水吐きを河床標高に 2 堆砂計画を一義的には定められない。したがっ
門設置し、洪水放流とともに排砂することで堆 て、貯水池堆砂シミュレーションにより貯水池
砂容量を減らし、洪水調節容量と堆砂容量を確 使用計画の検討を行った。
保する計画とした。 計画流入土砂量は 230 万 m3 と想定されたが、
3.常用洪水吐きの設計と施工 このうち上流にある不特定用水を補給する笹倉
(1) 常用洪水吐きの設計 ダムにおいて当該流域分の 35 万 m3 は貯留さ
常用洪水吐は、洪水調節機能(950m3/s を れることから、残りの 195 万 m3 を計画流入土
570m3/s に調節)と排砂機能(170 万 m3/100 砂量と設定し、解析モデルによる 100 年間の
年を自然排砂)を有した構造である。 シミュレーションを実施した結果、計画流入土
常用洪水吐の配置は、上流河道の線形、ダム 砂量 195 万 m3 のうち約 171 万 m3 がダムから
軸付近の基礎掘削後の河床形状等からダム完成 排砂され、貯水池には 24 万 m3 が堆砂する結
後のミオ筋を考慮した上で、河道の中央付近に 果となった。
配置することを基本とし、ゲートを有しない放 さらに、安全側の検討として、最大堆砂 24
流管(穴あき)として、減勢工中心線を基準に 万 m3 の発生直後に計画洪水が流入したと想定
河床高と同じ EL36.0mに 2 条配置した。 し、シミュレーションを実施した結果、洪水中
また、形式は四面ベルマウス形式、一面ベル に最大約 1 万 m3 の堆砂が発生したことから、
マウス形式及びナイフエッジ形式を比較し、開 この増分も含め 25 万 m3 を計画堆砂量とし、
水路流からオリフィス流までの流況が最も安定 このときの堆砂形状の貯水位-有効容量曲線で
し、構造がシンプルで施工性が良く、試験湛水 洪水調節計算を行い、洪水調節容量 650 万 m3
ゲートが小さくできる一面ベルマウス形式を採 を確定した。
(図-5)
用し、洪水調節機能を満足させる断面として幅 これにより、堆砂容量は100年間の流入土
4.45m×高さ 3.40m×2 条とした。 砂量の13%に減少し、ダム高を低く抑えるこ
なお、放流特性は水理模型実験により検証し とが可能となった。
た。
(図-3、4)
(2) 排砂機能
益田川ダムは、ダムから随時排砂するため、
(170 万 m3)
図-5 貯水池土砂収支
図-3 上流面図 図-4 標準断面図
191122_益田川ダムの設計と施工
(3) ライニング施設の設計 出された材厚と摩耗しろを確保し40㎜とした。
常用洪水吐は、高圧放流管(最大水深約40 放流管部以外の部分(副ダムスリット部及び
m、流速約20m/s)であるのでキャビテーシ 副ダム天端を含む)は、ライニング底面とコン
ョンによる損傷防止対策が必要なこと、及び排 クリートの隙間に充填するグラウチング注入圧
砂機能を有するダムであるので流砂や流木によ を考慮して19㎜に決定した。
る摩耗対策が必要なこと等から、鋼板や高強度 (3)常用洪水吐の施工
コンクリートによるライニングを施工すること 常用洪水吐の施工は、ダム本体のコンクリー
とした。 ト打設に合わせ、据付架台設置→管体組立→現
益田川ダムの上流に農地防災ダムが3ダムあ 場溶接→表面仕上げ→コンクリート打設→モル
り、河床付近に洪水吐(排砂設備)を有してい タル注入→セメントミルク注入の順に行った。
るので、排砂の現状を調査するとともに水理模 管体周辺部は高流動コンクリートで打設した
型実験結果を参考にしてライニングの範囲をダ が、ライニング底面と打設面とに生じた隙間は、
ム上流面、常用洪水吐及び減勢工(減勢池、副 あらかじめ設置したグラウト配管により、モル
ダム、副ダム下流)とした。
(図-6) タル及びセメントミルクを規定圧で注入し閉塞
使用材料は、益田川ダムへの適用性を比較検 した。
討し、高強度コンクリートとステンレス鋼(S 4.流木止め設備
US304)を採用し、厚さはそれぞれ次のよ 益田川ダムは、平常時は水を貯めないダムで
うに設定した。 あるので、通常の流木止設備(網場)を設ける
・高強度コンクリート部
高強度コンクリートの摩耗量
は、コンクリートの圧縮強度と
スリヘリ係数との関係からコン
クリート圧縮強度を50N/㎜ 2
とし、0.5mに決定した。
・ステンレス部
放流管部の材厚は、内圧で算
図-6 ライニング範囲
191122_益田川ダムの設計と施工
ことができないことから、流木が常用洪水吐を ・常用洪水吐呑口部の流木対策
閉塞させる可能性が考えられる。 洪水末期には流木捕捉工とダム本体の間に常
閉塞は、貯水池に浮遊している流木等が常用 用洪水吐より大きい流木が残留することが予想
洪水吐呑口に集まる洪水末期に最も可能性が高 され、これに対する閉塞防止設備を設置した。
く、特に二山洪水が発生した場合は閉塞の危険 4.現在の状況と今後の課題
性が高い。 益田川ダムは、常用洪水吐を河床に設置して
よって、洪水調節機能と排砂機能を維持する おり、洪水時には、その放流特性のみで自然調
目的で、常用洪水吐の機能を阻害するような流 節を行い、流入土砂も洪水とともに流下させる
木を捕捉し、かつ、すみやかに流下できるよう 構造である。
な流木止設備を設けるものとした。
(図-7) また、平常時は流水を貯水しないため、貯水
池内植生が保持でき、また常用洪水吐を通して
魚介類の遡上も可能であることから自然にやさ
しいダムといえる。
今後、洪水調節や排砂機能の検証、貯水池内
植生などに関するモニタリングを継続して行い、
当ダムの適切な管理はもとより、後発ダムへの
活用を図っていきたいと考えている。
図-7 流木対策イメージ
流木止め設備
(閉塞防止)
流木捕捉工
B4.5m×3 門
写真-2 ダム下流面
写真-1 流木止め設備(ダム上流面)
・流木捕捉工
ダム貯水池で一般に使用される「網場」と渓
流に用いられる「流木捕捉工」を比較し、経済
性および維持管理等を総合的に勘案して、流木
捕捉工を採用することとし、コスト縮減も考慮
して本体建設工事で設置した上流仮締切堤を改
造して利用することとした。 写真-3 ダム上流面
益田川ダムの設計と施工
1.事業概要
2.計画の経緯
3.常用洪水吐きの設計と施工
4,流木止め設備
5.現在の状況と今後の課題
島根県土木部河川課
益田川ダムの位置
島根県
図-1 ダム位置図
1
●益田川ダム
・洪水調節‥平常時は貯水しない
事業の目的
治水目的ダム
●笹倉ダム
・流水の正常な機能の維持
○益田川のダム計画は昭和47年災害を契機に事業開始
○過去最大の昭和58年7月豪雨災害により計画見直し
2
洪水調節容量 6,740千m3
洪水調節容量 2,530千m3
不特定容量 20千m3
堆砂容量 1,770千m3
洪水調節容量の増加 →ダム高H=10.1m

水没戸数増加
ダム高抑制の必要性 →堆砂の考え方検討
不特定容量の確保方法検討
○事業計画の経緯 図-2 ダム計画の変遷
昭和58年7月豪雨災害により洪水調節容量の増加が必要
→ダム高に制約があり全容量確保が困難→堆砂容量・不特定容量の確保方法検討
貯 水 池 容 量 配 分 図 貯 水 池 容 量 配 分 図
 益田川ダムに排砂ゲートを設置する計画  貯水池内に不特定補給ダムを設置する計画
【益田川ダム】 【益田川ダム】 不特定補給ダム
洪水調節容量
洪水調節容量 不特定容量
貯砂ダム
H=48.0m H=48.0m
排砂ゲート ■本ダム+不特定補給ダム(貯水池内)
堆砂量 ①本ダムに洪水調節、排砂機能
■本ダム+貯砂ダム ②貯水池内の朝倉地区に不特定補給ダムを築造し
①本ダムに排砂門の設置 堆砂量  容量確保
不特定容量 ②洪水の減水期に排砂門より排砂 ③本ダムの排砂は常用洪水吐より自然排砂
③洪水終了後、ゲートを閉め貯留 ④洪水の初期に不特定補給ダムの排砂門より排砂
排砂ゲート ④排砂量の軽減のため朝倉地区に貯砂ダムを設置 ⑤洪水終了後、ゲートを閉め貯留
貯 水 池 容 量 配 分 図
 不特定容量を上流農地防災ダム(笹倉ダム)で確保する計画
【農地防災ダム(笹倉ダム)】
不特定容量を既設ダムの
再開発で確保し、益田川 H=36.2m  不特定容量
  堆砂量 
ダムを治水専用として河 【益田川ダム】
床の常用洪水吐きより排
洪水調節容量
砂を行い堆砂容量を減 H=48.0m
■本ダム+農地防災ダム(笹倉ダム)
①本ダムに洪水調節、排砂機能
堆砂量 ②波田川の農地防災ダムを再開発を行い不特定容
 量を確保
③本ダムの排砂は、常用洪水吐より自然排砂
3
写真-2 ダム下流面 写真-3 ダム上流面
常用洪水吐きの設計
○常用洪水吐きの機能
洪水調節機能‥950㎥/s→570㎥/sに調節
排砂機能 ‥170万㎥/100年を自然排砂
○形式
一面ベルマウス形式
○配置・規模
河道中央付近の河床部に幅4.45m×高さ3.40mを
2条設置
4
益田川ダム構造図
図-3
上流面図
常用洪水吐き
H3.4m×B4.45m
図-4 標準断面図
排砂イメージ
○洪水時に流入する土砂は、洪水の初期及び末期の掃流力に
より,常用洪水吐きから下流河道へ自然排砂させる計画
5
排砂計画
• ダムから随時排砂す
るため、通常の100年
堆砂の計画では不可
• そこで、右記フローに
より検討を行い、貯水
池使用計画(治水容
量・堆砂容量)を確定
貯水池堆砂シミュレーション
図-5 貯水池土砂収支
現象面で危険な状況として、最大堆砂24万m3の発生直後に計画
洪水が流入したと想定し、最大1万m3の堆砂が発生。
この増分を含め堆砂容量を25万m3とした。
この堆砂形状の貯水池~容量曲線で洪水調節計算を行い、治
水計画を満足する洪水調節容量を確定し貯水池使用計画を決定。
6
貯水池容量配分図
排砂実験
○水理模型実験による最適形状の決定
1/40 模型実験
模型実験のポイント
• 常用洪水吐きの放流特性は、設置位置が河床レベルのため、
減勢工の水位に影響を受け単独で検証できない
• 減勢工には「流水の減勢機能」と「常用洪水吐きより流入してき
た土砂を減勢工から下流に排砂させる機能」という相反する機
能がある
7
原案(歯型シル)
最終案(副ダム・スリット)
8
○排砂実験(平均粒径26mm)
0 m3/s 200 m3/s
300 m3/s 500 m3/s
洪水吐きの磨耗対策(ライニング)
ライニングの必要性
① 常用洪水吐きは、設計水頭が40m(HWL76.0-放
流管敷高EL36.0)で高圧放流管(設計水頭25m以
上)の領域である。また、流速が21m/sと高速流で
あるためキャビテーションによる損傷を受けやすい。
② 同流域内での排砂設備を持つ農地防災ダムの摩
耗状況をみると、洪水吐きは呑口上面及びバケット
カーブの一部で鉄筋が露頭している箇所が確認さ
れている。
③ 貯水池から供給される流入土砂は、粗粒分が多く
通常の構造用コンクリートでは摩耗が懸念される。
(平均粒径26mm、最大粒径260mm)
9
図-6 ライニング範囲
①高強度コンクリート(流速が遅く磨耗量が少)
②ステンレス鋼(流速が早く耐磨耗性耐キャビテーション性が必要)
ライニングの施工
据付け架台設置→放流管(管胴)の据付け→現場溶接・仕上げ
→グラウチング配管・鉄筋組立て→コンクリート打設→グラウチング
10
ライニングの施工
据付け架台設置→放流管(管胴)の据付け→現場溶接・仕上げ
→グラウチング配管・鉄筋組立て→コンクリート打設→グラウチング
管胴下面の高流動コンクリートの施工
生コンクリートによる
ポンプ車打設
11
セメントミルクによるグラウチングの施工
ライニング施工状況:常用洪水吐き
構造用コンクリート
ステンレス鋼ライニング
12
ライニング施工状況:常用洪水吐き
構造用コンクリート 構造用コンクリート
ライニング施工状況:減勢工・副ダム
構造用
コンクリート 構造用
コンクリート
高強度コンクリート
高強度コンクリート
13
ライニング施工状況:副ダム
ステンレス鋼ライニング
流木止め設備
○流木止め設備の必要性
平常時貯水しないダム
→通常の流木止め設備(網場)が設
置できない。

何らかの対策をしないと常用洪水吐きが
閉塞する可能性がある。特に二山洪水が発
生したときに危険性が高い。
14
流木対策イメージ図
写真-1 流木止め設備(ダム上流面)
流木止め設備
(閉塞防止)
流木捕捉工
B4.5m×3門
15
流木捕捉工(上流仮締切利用)

新 二 次
た 次 転
に 転 流
ス 流 で
リ で 使
ッ 使
ト 用
を 用


‥1次転流で使用
‥2次転流で使用
‥新たに設置
流木止め設備(閉塞防止)
16
試験湛水時(SWL)
試験湛水後の状況
貯水池の状況
H17.10.06(試験湛水開始前) H18.02.09(試験湛水終了後)
H18.08.28 H19.08.16
17
益田川ダムの設計と施工

島根県土木部河川課
18


Use: 0.4919